心臓血管外科
〒211-8533
神奈川県川崎市中原区小杉町
1丁目383

代表/救急:044-733-5181
Cardiovascular Surgery
当科では伝統に裏付けられた技術、また国内外のパイオニア としての個人的な技術や学術的知見を発信してきました。 患者様一人一人に適した安全でかつ最新の医療を提供してまいります。
またいかなる難治性の疾患に対しても決してあきらめることなく、患者様とともに治療の道を探ります。
特 色
弁膜症・不整脈治療:ストップ THE 心不全、脳梗塞、抗凝固薬
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各種不整脈手術のパイオニアとして国内外でも有数の治療成績を誇ります。 特に心房細動手術では独自の治療方法(自律神経を調整する心臓神経叢焼灼)を確立し、多くの患者様を治療してまいりました。各種弁膜症に対しては自分の弁を温存する治療 (形成術)を積極的に行うことで心不全を予防するとともに、不整脈治療を組み合わせることで脳梗塞や抗凝固薬の副作用(出血)への不安がない人生を送っていただけるようにいたします。また低侵襲治療(小開胸や胸腔鏡下手術)も取り入れています。

自己弁温存手術

僧帽弁閉鎖不全症に対して自己弁を温存した形成術を行うことを第一としています。弁輪拡大による逆流に対しては人工弁輪というリングを用いた弁輪縫縮術を行い逆流を制御します。前尖もしくは後尖が逸脱した逆流に対しては全例で弁を切除することなくゴアテックス糸による腱索再建により弁形成を行っています。

その他、感染性心内膜炎による僧帽弁逆流に対しても積極的に弁形成術を行っています。

自己弁温存手術

重症心内膜炎の治療

重症の感染性心内膜炎は弁だけでなく2つの弁を連結する壁にも膿を形成、破綻を生じることがあります。二つの弁逆流が同時に出現し急性心不全を生じた患者様に対して心膜を3つに折りたたみ連結部を形成する独自の方法を用いることで人工弁を安全に移植する方法を報告しました。

心臓超音波検査と人工弁移植
Surg Case Rep. 2019 Jan 4;5(1):2. doi: 10.1186/s40792-018-0558-5.

心房細動の治療

心房細動の発症や維持する原因(メカニズム)は多様であり、肺静脈や左心耳を起源とする巣状興奮や心房を旋回するリエントリー、また左房から右房へと不規則に伝導する細動伝導などがあります。

メイズ手術とは、これら全てのメカニズムを治療できるように心房筋を切開縫合し、また高周波デバイスで焼灼(アブレーション)することで本来の心臓の脈拍(洞調律)を回復させる手術です。

心房の収縮力を維持させるためにUタイプのメイズ手術を主として行っていますが、心房が大きい症例や心房細動が出現してから長い年月が経過している症例に対しては再発のリスクが高く、左房の後壁を隔離するBoxタイプの手術を選択しています。

心房細動のメカニズム
心臓超音波検査と人工弁移植

永続性心房細動の治療

日本医科大学では1994年からメイズ手術を開始し、現在までで500人以上の患者様に対してメイズ手術を行ってきました。 心房細動の種類の中でも最も治療が困難とされる永続性心房細動は心臓疾患、特に弁膜症に合併することが多いとされます。

この永続性心房細動にメイズ手術を施行した患者様305人に対して術後の治療成績を調査したところ、手術後5年間でUタイプ手術の85%, Boxタイプ手術の77%の患者様が再発なく過ごされていました。 これらは手術後10年間以降もほぼ変わらず、メイズ手術の治療効果は長期間にわたり維持されることがわかります。

永続性心房細動の治療成績
J Thorac Cardiovasc Surg. 2016 Apr;151(4):1062-9.

心房細動の最新治療

心房細動のメカニズムの一つに自律神経の亢進があります。心臓表面にある心臓神経叢が関与していると考えられており手術中に心臓を刺激して自律神経の場所を探し、焼灼することで心房細動の治療効果が高まることが期待されています。

また日本医科大学では心臓神経叢が存在する場所を解剖学的に定め焼灼する解剖学的心臓神経叢アブレーションを考案しました。 現在ではメイズ手術にこのアブレーションを取り入れ良好な成績が得られています。

心房細動の最新治療
Ann Thorac Surg 2014 Nov;98(5):1598-604
弁膜症・不整脈治療 
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虚血性心疾患の治療:伝統と技術がつむぐ心拍動下手術
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日本医科大学は1975年から冠動脈バイパス術を開始、1997年からは心臓を止めずに行う心拍動下での手術を積極的に行ってきました。この手術方法は患者様のお体への負担、それに伴う合併症を減らす方法として知られています。武蔵小杉病院では日本医科大学の伝統的な手法を踏襲して90%以上の患者さんで心拍動下手術を行ってきました。またバイパスに使用する血管(グラフト)に動脈グラフトを使用することで開存率を高め、一生涯にわたり発作の無い生活を送っていただけるよう取り組んでいます。

心拍動下冠動脈バイパス術

心臓の拍動下に狭窄または閉塞している冠動脈の先へとバイパスする手術を心拍動下冠動脈バイパス術といいます。通常の心臓手術を行う場合には心臓を停止させ、その間は人工心肺という非生理的な血流を送る装置を使用しますが、脳梗塞やその他臓器障害がある患者さんにとって合併症を生じることがあります。我々は心臓を拍動させたまま特殊な器具を用いて心臓の一部を固定、さらに冠動脈の血流を維持しながら安全にバイパス血管を縫合します。

自己弁温存手術

長期成績に優れる動脈グラフトの使用

冠動脈バイパス術に使用するグラフトには動脈と静脈がありますが、長期にわたって詰まることなく血流を維持する点で動脈グラフトの方が優れることがわかっています。我々は動脈グラフトを積極的に使用し、複数の箇所へもバイパスできるグラフトデザインを用いることで患者さんの心臓にとって生涯にわたり発作が生じない冠動脈血流を維持します。

動脈グラフトの種類
左右内胸動脈
(胸骨の内側)

胃大網動脈(腹部)

橈骨動脈(前腕)
自己弁温存手術

手術中のグラフト血流評価

見た目の技術に頼ることなく、グラフト縫合後の血流を客観的に評価する方法として、血流計を用いてグラフト内の血流を測定します。 血流量と血流パターンを調べることでグラフトの良し悪し、または縫合部狭窄など技術的な問題の有無を明らかにします。

手術中のグラフト血流評価

冠動脈疾患と心房細動治療

冠動脈疾患に合併する心房細動に対して冠動脈バイパス術と同時に心房細動手術も行なうことで頻脈による心不全や脳梗塞の発症を予防し、患者さんの生活の質を改善いたします。心房細動の種類に応じて適切な治療方法を選択します。

冠動脈疾患と心房細動治療
虚血性心疾患の治療 
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大動脈瘤の治療:バランスを重視した治療戦略とサポート
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胸部から腹部骨盤領域までいかなる場所に生じた動脈瘤も治療いたします。その際、従来の開胸・開腹手術だけでなく、血管内に人工血管を留置する血管内治療、両者を組み合わせる治療、または体力を維持しつつ複数回にわけて行う治療など、患者様一人一人に応じた最も適切な治療方法をバランス良く選択することで確実な治療を目指します。また動脈瘤と診断されても未だ治療を要する大きさや形態ではない場合もございます。そのような患者様に対しても定期的に診察しサポートいたします。

急性大動脈解離への迅速な治療

24時間体制で急性大動脈解離を受け入れています。 致死的または重篤な合併症を予防すべく全身管理を行うとともに、Stanford A型解離に対しては 原則として緊急手術を行います。近年では患者様のお体に負担が少ない手法を積極的にとり入れ、 手術死亡率0%を維持しています。(2019年4月~)

急性大動脈解離の治療

大動脈瘤に対する術式選択

治療には従来の外科治療と最新の血管内治療がありますが、患者様のご年齢や大動脈瘤の形態、またその他疾患の合併の有無などを考慮し、適切な術式を選択するように心がけています。

大動脈瘤に対する術式選択

腹部大動脈瘤の治療成績

日本医科大学では高齢(75歳以上)または手術治療リスクのある患者様に対して血管内治療(EVAR)を積極的に行ってきましたが、開腹での人工血管置換術(OSR)を行った患者様と手術後の生命予後が変わらないことがわかりました。一方、血管内治療の患者様で再治療を必要とするケースが多く、リスクが少ない若い患者様には人工血管置換術をお勧めしています。

腹部大動脈瘤の治療成績
Asian J Surg. 2021 Jun 27;S1015-9

難治性動脈瘤への治療

特殊な病態・形態・解剖を有する動脈瘤では標準的な術式(人工血管置換術)では治療が困難である場合も想定されます。このような患者様に対しても安全で有効な治療を行い報告してきました。

下腸間膜動脈からのリオラン弓で腹部潅流された腹部大動脈への治療

腹部大動脈手術の術前・術後
Surg Today. 2007;37(2):133-6.
動静脈瘻を伴う腹部大動脈瘤に対する瘤縫縮術
動静脈瘻を伴う腹部大動脈瘤に対する瘤縫縮術 動静脈瘻を伴う腹部大動脈瘤に対する瘤縫縮術
動静脈瘻を伴う腹部大動脈瘤に対する瘤縫縮術
第49回 日本血管外科学会総会 2021年5月
大動脈瘤の治療 
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先天性心疾患の治療:小児専門医療に対応できる総合診療体制
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当院は周産期・小児医療センターを有しており、産科、小児科、新生児科、小児外科と連携しています。出生前診断から合併疾患、心臓手術後のフォローアップまで総合的に対応いたします。また循環器内科と連携し成人先天性心疾患にも対応しており、専門外来を設けております。心臓手術は、小児専門病院で修練を受けた経験豊富な医師が担当いたします。

低侵襲手術

手術の傷をできるだけ小さくすることはもちろん、手術後の痛みをできるだけ減らすことも侵襲の少ない手術と考えています。私たちは側開胸手術の創部に鎮痛剤を持続注射し、痛みの低減に取り組んでいます。
(2017年8月以降)

手術の終了時に細いカテーテルを肋間神経近くに入れて、鎮痛剤を持続注射します。

急性大動脈解離への低侵襲手術
鎮痛剤持続注射を行った患者の術後経過

Single group=
鎮痛剤単回注射を行った患者様
(2017年7月以前)

Continuous group=
鎮痛剤持続注射を行った患者様
(2017年8月以降)

鎮痛剤の持続注射により、手術後はより安定した経過であることが示されています。

(J Nippon Med Sch. Sep 1 2021;88(4):347-353.)

合併症低減

多職種での集学的治療により、合併症低減を目指しています。とくに呼吸器合併症については2018年より理学療法(体位変換)を積極的に取り入れ、効果を上げています。

体位変換

の図のような方法で、必要に応じて約2時間おきに体位を変えていきます。

(Morrow, B.M., J Pediatr Intensive Care, 2015)

呼吸器合併症軽減を目指した呼吸理学療法の有効性

理学療法(体位変換)を取り入れたことにより、
無気肺(肺の痰詰まり)発生が減少し、
再挿管(人工呼吸器離脱後に重症呼吸不全を生じて再度人工呼吸器を装着すること)件数が
減少しICU入院期間を減らすことができました。

(第56回 日本小児循環器学会総会・学術集会 2020年11月)

成人先天性心疾患手術

大学病院ならではのメリットを活かし、成人先天性心疾患手術を積極的に行います。日本医科大学の強みである不整脈手術も取り入れ、よりよいQOLを目指しています。その中でも心房中隔欠損症と心房細動の合併に対して日本医科大学独自の手術方法を行い、その治療成績を国内外へと報告してきました。

心房中隔欠損孔の閉鎖の他、心房細動手術(メイズ手術)を簡略化した方法で治療を行います。また欠損孔の位置、心房の大きさ、年齢などを考慮して患者さんに最も適した術式を選択いたします。

(Surg Today. Feb 2019;49(2):124-129.)

簡略化メイズ手術
(Surg Today. Feb 2019;49(2):124-129.)

新しいデバイス開発

右室肺動脈導管の図
ファロー四徴症など肺動脈弁が生まれつき小さいお子様には、人工血管を使用した肺動脈弁(右室流出路)の再建が必要になる場合があります。
私たちは手術後のお子様のより良い生活を目指し、東京電機大学と共同で肺動脈弁付き人工血管のデザイン開発を行っています。

(66th Annual Conference of ASAIO, June 2021)

先天性心疾患の治療
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末梢血管疾患の治療:テクノロジーと技術の融和
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下肢静脈瘤に対してレーザーを用いた治療を積極的に行っています。この他、2mmほどの小さな傷から癌を切除する技術を用いて患者さんのお体に負担が少ない方法を選択いたします。
難治性の腹部内臓・下肢動脈疾患に対して血行再建を行うことで、症状のない日常生活を送れるようにいたします。成績向上のために独自の血管吻合の開発、またカテーテル治療を併用したハイブリッド治療を行っています。

低侵襲かつ痛みを残さない下肢静脈瘤治療

ペインビジョン
ペインビジョン

当科では、レーザーを用いた血管内焼灼術を基本として下肢静脈瘤治療に積極的に取り組んでいます。静脈瘤の下肢には軽度な皮膚炎から皮膚潰瘍と多彩な症状を有することがわかっています。また静脈瘤治療においては頻度こそ少ないものの、時に知覚神経障害を生じるとされています。当科ではペインビジョンという皮膚感覚測定機器を用いて術前後で皮膚感覚の評価を行い、術前の神経障害の評価、そして術後の神経障害を予防する取り組みを行っております。

下肢閉塞性動脈硬化症に対する外科治療

総大腿動脈の閉塞性病変に対して内膜摘除を行っています。浅大腿動脈へと長い閉塞が残存する場合は内膜摘除をした部位から膝窩動脈またはその末梢へと自家静脈を使用したバイパス術も行います。

下肢閉塞性動脈硬化症に対する外科治療

静脈を用いた新たな縫合法の使用

あらゆる閉塞性動脈疾患への治療に対して自家静脈がグラフトとして使用できず人工血管を使用する際、あるいは吻合血管同士にサイズの差がある際に静脈を舟形状のカフとして介在させる独自の縫合方法を使用しています。静脈カフは縫合部を広く確保し、この部通過する血流パターンにより閉塞を予防するとされています。

下静脈を用いた新たな縫合法

J Vasc Surg Cases Innov Tech. 2020 Jun; 6(2): 165–167 

末梢血管疾患の治療
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